熊本に行ってみた。(その1)

 

この間の帰省の折、熊本に行ってみた~♪

 

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私の家系の本家のある四国は愛媛県、宇和島市を訪ねた帰りのこと。
行きは、新大阪から新幹線や特急を乗り継いで、松山経由で宇和島に。
帰路も逆の経路を辿り、松山で東京から帰省予定の知人と待ち合わせランチ~という計画があったが、日程が合わず見送りに。

 

そのまま宇和島滞在を長くしようか、ひとりでも松山の町を散策しようか(子規記念博物館にも行ってみたいし~)、それとも内子町に行ってみようか(明治時代の町屋街がそのまま残され見学可能~)、砥部焼の産地は遠いのだろうか…と、思いを巡らせていたとき、「熊本に遊びに来て!」というネット上の呼びかけが目に留まった。

地震で観光客が激減し、町の経済が回らず困っている。ただ遊びに来て、食べて飲んでお土産買ってくれるだけでも大きな復興支援になると書かれていた。

 

そこでふと、過去に九州から四国へ船で渡ったことがあったと思い出した。
調べてみると、宇和島から特急で30分ほどの距離の八幡浜の港から別府行きの船があった。

 

翌日には約束があり予定通り夜までには大阪に戻っていなくてはならない。
かといって宇和島を朝早く出発しても熊本に着く頃には帰る時間になってしまう。松山に立ち寄るようなわけにはいかない。
なんとかならないものか…と船の時刻表を見てみると、深夜運航がひとつある。明け方3時に到着する。
これでは少し早すぎるが、予約すれば朝5時まで船室で休むことができると書かれていた。

 

そこでJRの「おでかけネット」で調べると、5時半に別府駅を出る列車に乗れば、8時すぎに熊本に着く。熊本から新大阪までは新幹線で3時間ほどだから、夕方に乗れば夜には大阪に戻って来ることができる。

 

船の桟橋が一旦クローズされるらしく、船室の延長利用を選ぶと今度は5時まで下船できなくなるが、フェリー会社に問い合わせると、八幡浜も別府も港と駅の間はタクシーが待機してくれているとのことだった。ならば別府港で5時に下船しても5時半の電車に間に合うだろう。

 

思い切って、宇和島のその日のホテルをキャンセルし、九州に渡ることにした。
熊本の美味しいものをたあんと頂いて、家族へのお土産も今回はみんな熊本のものにしよう~♪

 

そんな計画を立てて宇和島へ向けて出発した。
ちょうど七夕祭りの数日後のこと。DSCN9160
宇和島駅に辿り着くと、駅構内には笹の葉の飾り付けがまだ残っていた。

四国の西の端っこのこの町。訪れる機会はほとんどなくなってしまった。
ホームに降り立った時、宇和島の滞在を短くするのは良くなかったかな…と後悔の念がよぎったが、エントランスに飾ってあった笹の葉を見上げた時、「そんなことないよ」と、宇和島の町から言われたような気がした。

 

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宇和島の人々の気持ちも一緒に、熊本に行ってこよう。
そんな気持ちになったのだった。
というわけで、宇和島のあれこれはまた別の機会に。ここではいきなり熊本に飛びます!

 

別府駅に到着したのが朝の5時すぎ。
別府から特急で小倉へ。小倉で別の特急に乗り換えて博多へ。博多からは新幹線に乗って熊本駅に到着~。

 

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熊本駅に降り立ったのは8時2分。
ホームから構内へと降りてゆくと…

 

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巨大くまモンがお出迎え~♪

朝の8時すぎというのに、構内の売店もお土産屋さんエリアも開いている。
「えきマチ1丁目」の看板の下に「がんばるばい! 熊本」の垂れ幕が。

 

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おぉ、これカワイイ~。これ食べたい~、お店をちょっと覗いて心は大いに揺れたが、ショッピングはあとあと!
まずは旅行カバンをコインロッカーに預けて、観光案内所へ。

 

熊本には20年以上前に一度来たことがあるが、旅の途中に立ち寄った程度で(昼食を。その際は馬刺しと、だご汁いただいた♪)、町をまったく見ていない。
名所を巡るのも楽しいが、私にとっては「味の思い出」がとても大事。知らない土地では郷土料理も愉しみたい。
そこで熊本が故郷という知人に出発前にメールして、おススメ名店を訊ねておいたところ、<むつ五郎>との返事が来たので、昼食はここで頂くことにして、見物は案内所で聞いて決めることにしようと思っていた。

 

「初めての訪問で、1日だけの滞在ですが、どこを見ればよいでしょう?」
そう訊ねた私に、案内嬢は、
「熊本城は震災でただいま公開中止で…」
と言った切り、困ってしまった。

 

なぜだか分からないが、なんだかひどく困っている。
「あ…熊本城でなくても良いのですが」
そう言うと、案内嬢はますます困ってしまい、なんとか笑顔になっていただこうと、観光にくるだけでも復興支援になるとネットで読んだので来たのだとか、微力ながらもブログで宣伝もできますし~などと言ってみたが、反応は鈍く、というより表情はほとんど迷惑顔…。
なんだ、この気まずい空気は…。

 

…ようするに、熊本市内の観光名所は熊本城くらいで、それが震災に遭って見学できず、ほかに見るところもない、それ以上を求めるなと…そゆこと??

 

「では熊本城はどこまで近づけるのでしょう??」
なんとか機嫌を直してもらおうと最大限に気を遣い、「熊本城関連」の質問を投げかけると、案内嬢はまたもや顔を曇らせた。

いったい何なんだ??

絶望的な気分になっているところに隣の案内嬢が「ニノマル駐車場までなら行ける」と口出した。すると私の「担当」は、あそこじゃお城はあまり見えないと反論し…。空気ドロドロ。
正直このとき、来るんじゃなかった…と後悔した。きっと町の人たちは、ネットで訴えるほど観光客など求めていないのだ。

 

そう思ったが、私は実際にこの地に来てしまっている。宇和島のホテルに泊まる倍以上の旅費を投入してここまでやってきたのだ。ほなサイナラと引き下がるのも悔しい。
「そんなに見えなくても構いませんよ♪」
暗澹たる空気を払拭すべく、努めて明るい声でニノマル駐車場の場所を乞うと、口出ししたほうの案内嬢が、「ここが熊本城で、この辺りはみんな閉鎖されていて、ニノマル駐車場、ここまでは入って来られます」と、マップ上に場所を示した。

 

くまもとmap        (これは実際に受け取ったマップのデジタル版。オリジナルはこちら

 

それを覗きこんで、≪「ニノマル」は「二の丸」と書くのか…≫と大いに納得しながら、左上の建物に大いに反応!
細川コレクション!!

忘れもしない、1993年のことだったか(→「だったか」って、忘れとるがな!)、ベルリンのマルティン・グロピウス・バウ美術館で「日本とヨーロッパ―1543~1929展」が開催された。
開国当時の日本の様子を物語る貴重な絵画が数多く展示され、その多くが細川財団の所蔵の品であると聞いていた。
あの頃の我が家は、夫が再び「学生」に戻り、非常に慎ましやかな生活が強いられていたが、それでもこの展示会には足を運び、あまりの感動に生活を切り詰めて再度訪ね、それでもまだ飽き足らず、せめて自宅で思いを馳せようと、清水の舞台から転がり落ちる覚悟でカタログまで買ったものだった。
懐かしい~。
あの時見た展示物にまた巡り会えるの?
これはまさしく奇跡の再会~!!
「この細川コレクションは見られますか?」
震災に遭っていないことを切望しつつ、鼻息荒く訊ねると、
「はい。こちらは通常はやっておりますが、ちょうど展示の入れ替えで本日は閉館ですね」
ガ━━(゚д゚;)━━ン!!

 

_| ̄|○ガックシ・・

 

絶望の淵から這い上がり、熊本城全体を見渡せる場所はないか訊ねると、それなら市役所の14階からが一番と教えてもらえ、<むつ五郎>の場所も教えてもらい、マップ上のピンク色の通りが商店街であることが分かった。

 

くまもとmap-2

 

そこまで聞いて、私なりの一日の過ごし方が頭の中に思い描けたので、お礼を言ってその場を後にした。

 

都心の方角である在来線側へと構内を歩き、駅前に出て振り返る。

 

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おぉ、なかなか立派な駅舎。くまモンもいっぱい。
携帯片手に立ち止まっている人が多いが、このときはまだポケモンGOは配信されていなかったから、単に朝のメールチェック??

 

駅舎を見渡し、深呼吸をした。
案内所で受けた陰鬱な念を拭い去らなければ。
招かれざる客のような感じは心に堪えた。
そこで心の整理をした。

 

「きっかけはどうであれ、私はこの地にやってきた。つまるところ自身の意志がそうさせたのだ。誰のせいでもないし誰の責任でもない。ここからは、私が私の意志で納得できる過ごし方をしよう。私が面白いと思うものを見て、私が美味しそうと思うものを食べて、私のために楽しもう。」

自分との折り合いを付けてから歩き始めた。

 

駅前に長蛇の列ができていた。

 

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出勤途中の人々だろうか。きれいに列を成しているのにびっくり。路面電車に順に乗り込んでいた。

 

私は路面電車の列には並ばず、それに背を向け歩きはじめた。

 

都心までは市電かバスに乗らないと無理と言われたが、訊くと徒歩で40分ほどの距離とのことだった。急いで街まで出てもお店はまだ開いていないだろうから、のんびり歩いてゆくことにした。
このとき8時半ころだったから、アーケード商店街に着くのが10時ごろ?? カフェでゆっくりと朝のコーヒーを頂いて、その後、市役所の14階に上がったり、二の丸駐車場へ行ってみたりして過ごし、昼食に<むつ五郎>に入って、あとはお土産を物色し、疲れたらまたカフェで休憩し…それであっという間に夕方になるだろう。
このときのイメージ的スケジュールはそんな流れだった。

 

30分後にまったく違う熊本を見る一日が始まるなんて、土地の人々に触れあえ、思い出のいっぱい詰まった特別な一日になるなんて、このときの私は空想することさえできなかった。……(その2へつづく)

 

‐‐‐熊本に行ってみた。‐‐‐

その1 ∞ その2

その1:熊本駅まで。
その2:唐人町での不思議な始まり
その3:「弟さん」とのドライブ
その4:唐人町散策
その5:古町散策
その6:熊本城から熊本駅まで。