白アスパラのシーズン(4月中旬~6月24日。始まりは気候次第だが終わりは決まっている)が終わるとベルリンっ子の関心は27日に向けられる。
「Siebenschläfertag/ジーベン・シュレーファー・ターク/ジーベン・シュレーファーの日」なる日がやって来るのだ。
ドイツでは、この日にこの夏の天候が決まると信じられている。
空のことなど日頃はさほど気にもかけないベルリンっ子も、この日が近づくとソワソワする。
さて、この「ジーベン・シュレーファーの日」とはなんぞや??
「ジーベン・シュレーファー」は、リスみたいな動物の名である。日本では「オオヤマネ」という。
こんなの↓
きゃっ、カワイイ💛
しかし、この「ジーベン・シュレーファーの日」の「ジーベン・シュレーファー」は、オオヤマネの日だと言っているわけではない。
直訳の「Sieben=7」、「Schläfer=眠る男」という」意味のほうが、この日の由来で、ドイツの夏の日の決め手となる…と、ドイツ人たちは固く信じている。それは、ドイツに残る伝説から来ている。
時は西暦251年。デキウスがローマの皇帝だった時代のこと。
あるときデキウス皇帝がエフェソスにやってきた。
「エフェソス」は現在のトルコ、聖書でいうところの「エペソ」だ。
新しく出来た「キリスト教」なる宗教を直々に征伐するのが目的だった。
それは信者にとっては「迫害」を意味する。
クリスチャンであることが知られたら殺されてしまう…。
そこで7人のキリスト信者が洞の中に身を隠すことにした。
岩で洞の入り口を塞ぎ、7人は息を潜めて時を過ごした。
その期間は1日や2日ではない。なんと、372年!
「どんだけ籠ってんねん」と関西地方から声が聞こえてくるが、…そもそも誰が数えたのだって話だが、とにかく372年もの間、7人は穴の中で寝ていたそうだ。
果報は寝て待てというからね。
それにしても372年も…。
日本には「浦島太郎」という話がある。
漁師の太郎が竜宮城へ行く話だ。
「浦島太郎」はお伽話として知られているが、なんと日本の歴史書『日本書紀』に実在の人物として登場し、常世(天国のこと)へ出かけたと書かれている。
また、三百年あまり後の天長二年(西暦825年)、平安時代後期の歴史書である『水鏡』にも帰還の旨が記されている。
浦島太郎は実在の人物なのだ。
いっぽう、7人の眠る男たちの話も実話として、6世紀ごろに書かれた書物に残っていて、イスラム教のコーランにも出てくるそうだ。
浦島太郎が常世に出かけていた期間は347年。
7人の男たちが寝ていたのは372年。
7人の勝ちだ。(…って戦ってないって)
さてこの「ジーベン・シュレーファーの日」、日本語でどう訳すべきか。
歌舞伎風なら「えふぇそす七人眠り男」か。
黒澤明風なら「7人の爆睡侍」だろうか。
ベルリンの社会問題風なら「7人のペナー!」だな。
…う、ん。どれにしよう。
あ、「眠れる森の美女」の姫も100年寝ていた。昔の人はよく寝たのね…。
「眠れる森の美女」のにあやかるなら、「眠れる七人の男たち」?
「眠れる七人の男たち」、「眠れる七人の男たち」、「眠れる七人の男たち」…
何度も復唱してみたら、なんだか語呂が悪い。
黒澤明テイストも入れることにして「七人の眠れる男たち」が一番善い感じ。
というわけで、6月27日は「Siebenschläfertag/ジーベン・シュレーファー・ターク/眠れる七人の男たちの日」。
この日がなぜ注目されるのかというと、この日に雨が降ると、このあと7週間雨が降る…ようするに、その年の夏は雨ばかり、冷夏になる、せっかくの夏休みなのに台無しだぁ~。ということだ。
夏のバカンスのために勤勉に働いているようなドイツ人、冷夏だけはなんとか避けたい。
そんなわけで、夏の決め手となる、眠れる七人の男たちの日、6月27日。
夏らしい夏を期待する方は、てるてる坊主など対策を~。
【余談】
ちなみに、なんでまた「オオヤマネ」がドイツ語で「眠れる七人の男たち」という名前になったのか。
ウィキペディアを見てみると、オオヤマネは冬眠するそうだ。それも10月から5月にかけてというからかなり長い。この長さが「眠れる七人の男たち」の名を頂く所以だろうか。
そして「蓄えられた脂肪に頼って冬を生き延びる。その間、代謝率と体温は著しく低下し、1時間程度なら呼吸を完全に止めてしまうこともできる」のだそうだ。息の長い生き物なのね。