ボディランゲージ

(この記事は2005年2月8日にべるりんねっと789のコラムに掲載された内容を加筆修正したものです)

ベルリン市内のある学校の廊下。
おもしろいポスターを見かけた。
その国の頃場が話せなくてお、これを使えば世界どこでも通じるゾと、世界各国のボディーランゲージを絵解きしていた。

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まずは大きく、微笑んでいる口元の絵が描かれている。
Lächeln=微笑みだ。
世界中どこの国でも理解可能とあり、できるだけ使おうとも書き添えられていた。

そのすぐそばには、クビを縦に振っている顔で「ヤー(日本語:はい)」、横に振っている顔「ナイン(日本語:いいえ)」など、世界共通であろう仕草が並び、次第に国別になっていく。
少年が頭をポリポリ掻いている仕草に「Nachdenken」と書かれ、「ほとんどどこでも」と記されている。難しく言えば「思案する」。子供向けのポスターであるから、ここでは「なんだったっけ・・・」といったところか。

そして女の子が片方の腕を上げ、もう片方の手で、上げた腕の脇辺りを掻く仕草。
「SO EIN DUMMER WITZ!」と書かれている。「笑えね~よ」くらいだろうか。ベルリンでも見かけるが、インドネシアの仕草だそうだ。

それから、親指と人差し指の指先を触れさせ円を作り、残りの3本は広げるように立てる手の絵があった。

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北ヨーロッパおよびアメリカでは「O.K.」を意味するが、南ヨーロッパでは、なんと「Du Arschloch」になるらしい(→その意味をここで書くのは憚られるので、www.wadoku.deなどでご確認を)。
おお・・・これはいかん、と、思った瞬間、その下に「Japan」と書かれているのに気がつき、日本でもこれは「O.K.」ではなかったか…と、見ると大きな文字で「GELD」と書かれていた、。
金銭、お金という意味だ。しかしこれでは「ゼニ!」と言っているように見える。日本の人が皆お金を表現してこのような仕草をすると思われてはかなわない。その上、ここには注訳まで付けられ「小銭に両替してくれ」と書かれていた。
…ん??
私の育った故郷ではこのようなボディランゲージはなかったが…。
面白いと思って眺めはじめたはずなのに、だんだん違和感。
引き続き他のの絵柄も眺めていくと、 握ったこぶしの親指だけを立てた絵があった。
(↓この記事は2005年のもの。フェイスブックの普及した今では「いいねマーク」といえば良いが、当時はなかったためにこの表現)
ヨーロッパ&アメリカでは「カンペキ!」と書かれ、日本では「5」とされている。・・・は??
…このポスター、間違った文化を伝えていやしないか。
疑心暗鬼になってきたところで、ご婦人がひとり近づいてきた。
そこで思わず問いかけてみる。
私「ここに”5”とありますが、これは数字の”5”でしょうか。それともフュンフという言葉に他の意味があるのでしょうか?」
婦人「さあ・・・5は5よね、きっと」
そうかあ…やっぱり「5」かあ。「指圧の心は母心」なら分かるが、なんで「5」なのだろう。
…と、「Nachdenken」ポーズをすると、ご婦人が「あれ?」と言った。
見ると、女の子が上半身を45℃前に倒している絵を見つめている。そしておかしいと言うのだ。
これは日本の仕草と書かれ、「お辞儀」と添えられていた。
おかしいも何も、これこそデパートの新人研修でも教えているであろう、正統派の礼の仕方だ。
しかしご婦人は「日本の挨拶はこうするのでしょう?」と言いながら、、背筋を一旦すっと伸ばし、胸の前に手を合わせ、神妙に上半身を前に倒した。おいおいおい…
その格好をポスターに見つけたので「それは、ほらここに…インドネシアと書かれていますよ」と、絵を指すと、「おかしいわねえ、日本はこうよ」とまた同じ仕草を繰り返した。
日本人にドイツ人が日本のお辞儀を語って聞かせるとは…片腕を上げ、もう片方の手で脇を掻くしかない午後であった。